TVチャンピオン「スープ1杯の幸せスープ職人選手権」優勝

 

この出場では、多くの事を学びました。

当時私は、紀尾井町の成川亭というグランメゾン(高級店)でシェフをしていました。

最初にこの番組出場の依頼を頂いた時は、何も考えず気楽に快諾致しましたが、今思えばその時点で私はとても大事なことを忘れていたのでしょうね。

正直、収録当初は参加されていた他のシェフの方々とも初対面でしたし、店名を聞いても知らないお店ばかりでしたので、根拠のない自信から「自分が勝って当たり前」ぐらいの上から目線で臨んでいました。

なんと失礼なことだったかと反省しきりです。

しかし、予選ラウンドでは、まさかの最下位!このまま終わるわけにはいきません。

「成川亭」のシェフとして負けるわけにはいかなかったし、店の看板に泥を塗ることにもなりかねません。正直、焦りました。

でもその時、審査員を務めていたトラックドライバーの一人の方が僕に言ってくれました。

「金子さんのスープはきっととても美味しいんだと思う。でも俺たちには高級過ぎてその良さがわかんないんだよね。ごめんね。。。」と。。。

その瞬間に、なんで自分が最下位になったのかが解りました。

それまでは、「俺の造る料理は普段はこんなところでは食べれない」と、言うような思い切り高飛車な態度でのぞんでいた自分がそこにいたのです。

そんな私の気持ちを団地ママやトラックドライバーの方々に見事に見破られていたんだと思いました。

全く評価されない美味しいはずのスープは、自分の気持ちがまずくしていたんだとその瞬間に気づかされました。

「穴があったら入りたい」とは、まさにあんなときの状況なんですね。

食べて下さる人に対して全く優しくなかった!

何を望んでいらっしゃるのかを考えることもしなかった!

最低の料理人がそこにいました。

シェフになりたての当初は熱い情熱を抱え、来て下さるすべての方に誠心誠意、美味しいものを食べて頂くんだと考えていた頃のことを、忘れていたんですね。

猛烈に反省し、気持ちを切り替えることにしました。

まだチャンスは残っているのだから。

気持ちの切り替えは、自分でも驚くほど上手くいきました。

大差をつけられての最下位になったおかげで、自分に足りないものが明確になりました。

「食べさせてやる!」ではなく「一生懸命作りました、どうぞ召し上がってください」の気持ちで決勝ラウンドを戦うことが出来ました。

食べて下さる人たちの顔や体調を考えながら作ってこそ、本当に美味しいものが出来るんだとあの番組が教えてくれました。

そしてあの時間を共に過ごして頂いた他の出場者の方々にも心から感謝しています。

決勝ラウンドではそんな気持ちが審査員の方々に伝わった結果が優勝というご褒美をくれたんだと思っています。

今でもその学びを守り日々、料理と向きあっています。

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